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朝日新聞「自由自在」

2019年05月24日

朝日新聞2019年5月23日 朝刊 19ページ

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朝日新聞 2019年5月23日 朝刊

国境も紛争も越え 柔道の友情は続く

 柔道による国際貢献を13年にわたって続けてきたNPO法人「柔道教育ソリダリ ティー」(理事長=山下泰裕・全日本柔道連盟会長)が5月末で活動に幕を下ろす。様々な要職に就く山下さんが時間を割けなくなり、惜しまれつつも解散を決めた。
 途上国への用具提供のほか、指導者らの受け入れや派遣といった異文化交流を通じて、人々の成長や連帯を促し、国の争いを越えた友情を育んできた。2016年リオデジャネイロ五輪女子70キロ級を制した田知本遥さん(28)も活動に参加した一人だ。17年、アフリカのボツワナを訪問。青年海外協力隊員として同地で柔道普及に尽力し、14年に事故で亡くなった東海大時代の同級生、井坪圭佑さん(享年23歳)の 名を冠した道場の開設に立ち会って、現地の子どもたちを指導した。
 現地で愛された井坪さんの大きな顔写真が飾られた道場を見て、田知本さんは思った。「私が金メダリストでも、こんな風に海外で自分の名前がついた道場は建たないだろうな」。五輪で優勝できたことは誇らしい。けれど、五輪で勝つことだけが柔道の価値ではない。そんなことに改めて気付かされた。
同法人では、山下さんや現男子日本代表監督の井上康生さんがイスラエルとパ レスチナの子どもを現地で指導し、その後も対立が続く両地域の指導者を日本に招くなどの交流を続けてきた。中国では南京市や青島市で道場新設に協力するなど、活動は多岐にわたった。
 その志は井上さんが今春に立ち上げたNPO法人「JUDOs」が受け継ぐ。山下さんの活動に刺激を受けてきた井上さんが、事業の一部を引き続き行うという。勝ち負けだけではない柔道の理念は、これからも世界に伝わっていく。
野村周平