田知本遥さんをボツワナに派遣しました!

2017年03月10日

2013年7月から青年海外協力隊としてボツワナで柔道普及に当たっていた井坪圭佑さんは、2015年10月9日、南アフ
リカで不慮の事故により逝去しました。井坪圭佑さんの名前を冠した柔道場が2017年2月28日、彼の活動していたボツワナ・ハボローネ市で開館しました。Sensei Itubo Memorial Dojoの開館に合わせ、光本事務局長、田知本遥さんを派遣しました。

田知本遥さんからの報告です。

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ボツワナ共和国報告書       

田知本遥

日時:2017年2月24日~3月3日
場所:南アフリカ・ケープタウン、ボツワナ・ハボローネ

 亡き同級生、友の井坪くんに逢うために、南アフリカのケープタウンとボツワナ共和国に行かせて頂きました。彼が生前まで指導していたボツワナに、初めての柔道場が建てられることになり、そのオープニングセレモニーで技のデモストレーションをしてきました。
「Sensei Itsubo memorial dojo」

  
 彼が待望していたこの道場で、私が、立ってデモストレーションしていることに彼はどう思うのかな。喜んでくれているかな。それとも、ずるいよって言われてしまうのかな、とかいろいろ思いながら、一本。一本。精一杯の気持ちを込めて技の披露をさせて頂きました。

 新しい道場には、大きな窓がたくさんあり、光溢れる道場になっていました。そして、彼の写真が大きく飾られていました。
     
 以前の道場も見せてもらいましたが、スタジアムの観客席の真下という場所に、窓もなく、とても閉鎖的な場所でした。しかし、その道場には井坪くんが帯とチューブで作った練習アイテムがありました。また、この場所も使えないときは外に畳を敷いて、青空教室の様に柔道をしていたそうです。

 
   そして、ボツワナの子どもたちは礼儀が正しく、きちんと止まって挨拶をしてくれました。彼の成したかったことが現れているようで嬉しく思いました。

   ここで過ごす数日間、不思議と彼のMindに触れられた気がしていました。彼の行った場所、彼が教えた道場、彼が共に過ごした人と時間を共有していると、きっとこんな風に思ってそうしたのだろうな、など勝手に思ってしまいました。これ迄は、ボツワナと聞くと、勿論見たことも行ったこともない地で、なぜ、どうやって、と悲しいイメージしか浮かぶことが出来ませんでした。しかし、今回こうして現地へ行くことが出来て少しその気持ちが和らぎました。それは、現地の皆が、井坪くんのことを今でも大事に思っていて、彼の意志を受け継いで目標を達成しようと前に進んでいたからです。そして彼が充実した日々を送っていたことを感じることができたからです。
 リオにも出場した井坪くんの愛弟子のゲビンは、2020東京五輪で成果を出すことが目標と話してくれました。それが井坪君との共通の目標だからと言っていました。

【写真右 ボツワナ60Kg級代表 ゲビン 井坪君と密接な時間を過ごしたひとり】

井坪くんのことを知っている生徒には、
「彼はどんな先生だった?」と、必ず尋ねました。

「一度も怒鳴られたことがなかった」

「銅メダルをとったとき、褒めてくれたあとに、これで満足しないで頑張ろうと言ってくれた」
「父のようだった」
「冷蔵庫にはいつもたくさんのジュースが入れてあって、理由を聞くと,皆に配るためにいれているんだって」

 ボツワナに行って分かったことは、彼は日本と同様にたくさんの人に慕われて愛されていたということです。良い環境とはいえない練習環境だったけど試行錯誤することさえも楽しんでもいたということ。

 帰国したら、彼がボツワナの地で残した軌跡はどれだけ素晴らしかったかを、私と同じように彼を想っていた友達、そしてそれ以上に彼を想っている身内の皆様に、このことを伝えられたらと思いました。このような立派な道場が建てられたのは、井坪くんがただ帰らぬ人となっただけではなく、全て彼の人柄だと思いました。そうでなければ、日本人の、そして自身の名前の入った道場が、異国の地で建てられることはありません。そしてあのように大きな写真も。私のような柔道家が一生懸けても建てることのできないようなものがボツワナにあります。
それを伝えたかったです。

 私も生前から、そしてその後も彼に背中を押されたように、彼のためにも、彼のボツワナの教え子達の背中を一人でも多く押したい気持ちで滞在させてもらいました。しかし、背中を押されたのは私の方かもしれません。子どもたちの目の輝きや、柔道を大好きだという屈託のない笑顔は、何よりも素晴らしいパワーだと感じました。柔道が好きか という質問に、皆、手を挙げてくれました。その子供達が、どうか、彼の見守る新しい道場で、その気持ちを忘れず、歩んで行ってくれることを心から願います。