柔道指導者をアナポリス・ワシントン柔道クラブに派遣しました。

2016年12月19日

2016年8月29日~9月16日の期間、東海大学男子助監督の熊代佑輔氏をアメリカ・ワシントン近郊のジョージタウン大学ワシントン柔道クラブ及びアナポリス海軍士官学校に派遣しました。

熊代氏からの報告です。

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ワシントン・アナポリスでの海外指導を終えて
熊代佑輔

歴代、ワシントンで多くの先生、選手が柔道指導を行い貢献してきたと聞いておりました。今までの築いてきたもの、良い伝統を壊すことが無いように、そして今後も指導者派遣が継続されるようにと考え臨みました。今回の海外指導でお世話になる古森さん、奥様のスーザンさんの期待に沿えるように取り組みました。8月28日、兵庫県尼崎で全日本実業柔道個人選手権大会結果に出場し、翌日午後から成田空港を出発する。帰国後2日目に試合を迎えるというハードスケジュールでした。

ワシントン・到着と暖かい出迎え

8月29日、筋肉痛の身体に鞭を打ち、成田空港に向かいました。フライト時間は約13時間。緊張感と肩幅が広いため、通路を通る人がぶつかり、挨拶していくために睡眠時間をとることが出来ませんでした。飛行機がワシントン・ダレス空港に到着。長い入国審査の列に1時間以上並びました。審査員からの会話が分からなくなってしまったのですが、スーザンさんが事前に作って下さった書類を見せスムーズに審査を済ませることが出来ました。
入国審査後、荷物を受け取り、外に出るとすぐに古森さんとお会いすることが出来ました。そのまま空港からホームステイ先のご自宅に向かいました。家の扉を開けた瞬間、スーザンさんが暖かく迎え入れて下いました。そこで、用意して下さっていたおにぎりをいただきました。まさか、アメリカに来ての初めての食べたものがおにぎりになるとは・・・。指導の間にも、スーザンさんは日本食を定期的に作って下さり、日本食を恋しいと思うことなく生活できました。

ワシントン柔道クラブ

  
 着いたその日から練習、柔道指導を開始しました。長距離の移動と前日の試合の疲労で身体は厳しかったのですが、3週間しかない時間を無駄にしないよう気合を入れて練習場に向かいました。ワシントン柔道クラブは、高齢の方から子どもたちまで男女が練習を行っていました。他にもパラリンピックに出られるブラインドの柔道家もいました。
初日は練習の流れが分からないのでウォーミングアップはワシントン柔道クラブのタッド先生に進めていただきました。2回目以降はウォーミングアップから私が担当することになりました。できる限り、毎回違ったメニューを1つ入れることを心掛け、飽きることのない内容にしました。
 初日は30分ほど体を動かした後に、内股を教えて欲しいという要望があり、相四つに対する内股を講義しました。英語に自信が持てず、言葉でハッキリと指導できないでいると、古森さんが通訳を引き受けて下さいました。そこからは9割の日本語と1割の英語で行いました。予習や準備をしていったのですが、実際に体を動かしながら行うとそれらが全く出てこなくなるのが課題でした。詰め込んだだけの英語では、自分自身で理解してないため相手にうまく伝えることが出来ないと感じました。古森さんには、ほとんどの時間を助けていただきました。

 
 乱取り練習では、次から次へと予約が入り、休む暇ないくらいに乱取りを行いました。立技だけでなく寝技、組手や技の受け方なども講習のテーマとして取り入れました。
 東海大学の特別実習で学んできたことを活かすことが出来ました。「日常の動きと連動させる」、「技と技の繋がりを伝える」とアメリカの選手は非常に興味を持つ。という情報をワシントン柔道クラブの日本人の方にアドバイスしていただきました。それを取り入れてからは更に濃い内容の柔道指導になったと思います。選手がわざわざ私のところに来て、「この教え方は非常にわかりやすい」と言ってくれる事があり嬉しく感じました。その言葉は私に安心と自信をもたらしてくれました。
 自分の持っている技術を全て出し、出し忘れることがないように3週間指導しました。伝えた技術をすぐに使ってくれるため、嬉しさとレベルアップする選手に、てこずりながら練習を続けました。私が乱取りを行っている時には、練習を中断し、携帯やカメラなどで撮影する選手もおりました。練習後には、必ず私の所に質問に来る選手がおり、その後ろに他の選手が並ぶという初めての経験もしました。練習の最終日には、様々なプレゼントと拍手で送り出してくれ、「必ずまた来て下さい」と言われことは、強く心に残りました。もっと長い時間ここで一緒に柔道をしていたいという気持ち、名残惜しいと感じました。


海軍士官学校

 海軍士官学校では、決して観光では入ることの出来ない場所へ入校が認められ、更に温かい姿勢で受け入れていただきました。厳重なセキュリティーがあり、建物の凄さというものを感じることが出来ました。
 初日は古森さん、海軍士官学校で柔道指導をされているタケモリ先生が私のことを紹介して下さいました。その後、私との掛け試合が行われました。対戦相手は10人弱で一本を取ると次の選手と変わるという内容でした。学生は何とかして私に勝とうと、力一杯振り回そうとしました。ですが、私も意地がありますし、遠慮しないことが私の役目と思い取り組みました。

  一人一試合というルールで始まったものの、是非もう一試合させて欲しいと3名の選手が再戦を申し出てきました。それには、驚きましたし、柔道に対する貪欲な向上心が伝わって来ました。掛け稽古は7回の練習の中で3回行いました。指導最後に対戦した時には、初日と比べて格段にレベルがアップし、初めは掛けていなかった技、連絡技まで使用する選手が出ていました。対戦しながら、選手の成長に私の指導が多少なりと働いたのかなと思うと嬉しい気持ちになりました。士官学校の選手は、柔道を始めてから1、2年の選手が多かったのですが、ポテンシャルは高く、力の強さには驚かされました。柔道が好き、関心の高さは特に素晴らしかったです。「道場に残って指導者としてやってくれ」と先生、コーチの方々にお願いされ続けたことは、お世辞であってもとても幸せに感じました。

休日

 初めて迎えた土曜日に、古森さん宅でホームパーティを開いて頂きました。30名近い方が参加され、大変盛り上がりました。スーザンさんが何日もかけ、この日のために準備した料理の数々は、見た目、味ともに素晴らしいものでした。
 翌日の日曜日は、スーザンさんのお知り合いの日本人の方3名でブランチを楽しみました。目の前には自然が広がる綺麗な景色、食事も会話もとても楽しい時間を過ごすことが出来ました。
 ワシントンはエチオピアからの移民が多く、エチオピア料理が多くあるということでした。多くの方に勧められエチオピア料理のインジェラ(クレープ生地の上に味付けされた肉や魚が乗り、それを巻いて一緒に食べるもの)を食べたりもしました。
 2週目には日本大使館の川野さんに、大使館の作業内容や建物内を紹介していただきました。普段入ることの出来ない場所、行使と貴重な時間を過ごさせていただきました。川野さん宅でのバーベキューにも招待していただきました。他にも日本人の方がおり、会話も弾み、更に美味しい食事で気持ちも和みました。
 他の日曜日は、ワシントン柔道クラブのロシア人のイアンさんに、実弾体験に誘っていただきました。アメリカは銃が存在する社会ですが、そのような社会とは無縁の私にとっては想像のつかない世界でした。射撃場に足を踏み入れた時、その異様な空間になんとも言えない気持ちになりました。他の人の撃った音の衝撃、自分の前に順番来て、弾を込め撃つ瞬間まで、感じたことのない死の恐怖のようなものまで感じました。
 最後の週の火曜日には、ワシントン柔道クラブのギャリーさんとメジャーリーグを見に行きました。念願のアメリカでのプロスポーツ観戦。はじめにスタジアムの大きさに驚きました。エンターテイメント性も日本とはまた違うこと、激しい盛り上がりに驚きました。

観光

 スーザンさんの勧めで空いている時間には、積極的に観光しました。ワシントンでは、無料で入館できる施設が数多くあり、アメリカ映画で見る場所をたくさん見ることが出来映画好きの私は大変興奮してしまいました。前からリンカーン大統領とキング牧師に、興味があったので真っ先に見学に行きました。映像で見るものと実際に生で見るものでは、その場の空気など感じるものが違いました。博物館ではもちろん全てが英語表記で、内容を理解することが難しかったですが、アメリカという国のスケールの大きさ目にしました。航空宇宙博物館、自然歴史博物館、ホワイトハウス、国会議事堂、FBIなど、ワシントンに滞在中に様々な場所を見学しました。9月11日にペンタゴンを訪れましたが、強く考えさせられるものがありました。

最後に

 柔道教育ソリダリティーの光本さん、小澤さんから、何年かにわたりワシントンでの海外指導を誘っていただき、感謝しております。渡米前から私のプロフィール、試合の映像等を提供して下さっていたため、問題なく指導することができました。さらに多くの先生方に海外指導に関して、たくさんのアドバイスを頂けたことに大変感謝しています。
 ワシントンでは、多くの方々が会話もうまくいかない私を食事や観光、レジャーなどに誘ってくださり、3週間で出来る限り体験をさせてくれようとした現地の方の姿勢に感謝しております。今後は、日本、東海大学に来る外国人にも実践して行きたいと強く思いました。
 そして、中々期待に応えることができなかった私を温かく受け入れてくださった古森さん、スーザンさんには、言葉では表せない程感謝しております。今後の私の成長、行動が恩返しに繋がると信じ精進して参ります。
このような素晴らしい経験が出来ましたのも私に「柔道」があったからだと実感しました。日本を出ることで改めて柔道の素晴らしさを認識しました。今後もチャンスを見つけ海外への経験を増やしていきたいと思います。