アメリカ・ワシントン地区へ派遣した藤井岳氏より報告です。

2014年10月07日

2014年8月25日~9月8日の期間、アメリカ・ワシントン地区のワシントン柔道クラブ及び首都近郊の米海軍士官学校へ派遣した藤井岳氏より、活動報告が届きました。

【ワシントン柔道クラブの皆さんと】

【米海軍士官学校柔道部の皆さんと】

*アメリカ研修報告書*

慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 スポーツマネジメント専修
パーク24株式会社 柔道部
藤井 岳

 2014年8月25日から9月8日の2週間、柔道の指導者として、アメリカ・ワシントンD.Cへ派遣して頂きました。具体的には、ジョージタウン大学の体育館で活動しているワシントン柔道クラブとアナポリスにある海軍士官学校柔道部の二か所で、指導をさせて頂きました。
 ワシントン柔道クラブは、毎週月・水・金曜日に活動しており、私が滞在していた2週間の間に行われた練習全て、計6回参加しました。最初の練習は普段彼らが行っているメニューを一緒にこなし、2回目からはそれを参考に、準備体操から私の考えたメニューで練習を組み立てさせてもらいました。その中でだいたい1日1個のペースで技の説明を行い、その反復練習も多く取り入れました。実戦の中での技を体感してもらうことを意識して、乱取りも毎回40分~50分ほど行いました。
海軍士官学校では、基本的に週末を除く毎日練習があります。私はワシントン柔道クラブの練習のない、火・木曜日に参加させてもらいました。2週間で計4回です。こちらは、主に彼らの練習メニューに従い、要所要所で指導を行うという形を取りました。ここでの通常メニューには、士官学校で柔道を始めた選手がほとんどということもあって、乱取りなどの実践よりも、打ち込みや投げ込みなどの反復練習が多く取り入れられていました。私は、彼らの質問に答えたり、得意技を見せたり、新しい練習方法の提案をしました。

<研修を通じて>
 もしかすると私は、本当の意味で柔道の楽しさ、価値をまだ知らないのかもしれません。遠い異国で、私とは全く異なる背景の中で一生懸命柔道に取り組んでいる人たちを間近で見て少し考えさせられました。
 私がここまで15年以上も競技一筋でやってこられたのは、間違いなくある程度「勝てたから」です。その中で人間教育的な要素ももちろん大切にしてきましたが、それはあくまで勝つことを目的とした厳しい鍛錬の先にあるものだと信じてきました。もし仮に、誰にも勝てず、レギュラーにも入れず、投げられてばかりの日々だとしたら、私はきっと柔道から逃げ出していたと思います。それでも人間的に成長できるから、と大人になることは出来なかったはずです。
 ところが、アメリカの選手たちは、必ずしも勝つことを目的に柔道と向き合ってはいません。もちろん勝つ気がない、やる気がない、という意味ではありません。ただ「勝つこと」ではなく「正しく理解すること」を目的としているように思えます。それは普段の練習や試合の雰囲気の中に感じましたし、何より、日本から教えにきた「先生」と呼ばれる私に対する態度がそれを物語っていました。私の実力に対するものではなく、実力を超えたものへの敬意を感じるのです。勝敗へのこだわりがない分、強いから偉いとか弱いからダメといった見方が存在しないのでしょう。競技の奥にある、精神の部分をただひたすら学ぼうと私に近づき、色々なことを聞いてきます。
 彼らと触れ合い、彼らの姿勢を知ったところで、おそらく私自身は、少なくとも現役中は、勝つこと以外に競技の目的を置き換えることは出来ません。しかし一歩引いて考えれば、嘉納治五郎先生が柔道を確立した本来の目的はまさにこの「精神」だったはずです。柔道が今後世界で普及するために、あるいは日本でその価値を再確認するために、更に世界から日本柔道への敬意を再び得るためには、この考え方を理解していく必要があるのではないかと考えました。

<謝辞>
 最後に、今回このような貴重な機会を与えて下さった柔道教育ソリダリティー様、滞在中何から何までお世話になりました古森義久様・古森スーザン様に、この場を借りて熱く御礼申し上げます。今後ともこのような交流や新たなる普及が続いていくことを願うと共に、私自身その活動に少しでも貢献できればと思っています。ありがとうございました。