アメリカ・ワシントンへ派遣した藤井岳氏について、産經新聞の記事を紹介します。

2014年09月11日

2014年8月25日~9月8日の期間、アメリカ・メリーランド州アナポリス及びワシントン地区へ派遣した藤井岳氏に関して2014年9月6日付産經新聞に掲載されました。ご紹介させていただきます。
 

 

【緯度経度】
日米の絆強める柔道
2014.9.6

 日本からの積極果敢な対外発信を求める声が日本国内で一段と高まってきた。国際交流の求めだともいえよう。対外発信も国際交流も方法は多様だが、日本の柔道が米国相手の発信や交流に大きな効用を発揮する実例を最近、また目撃した。
 元世界選手権者の山下泰裕氏が理事長を務める柔道国際普及の民間団体「柔道教育ソリダリティー」は、慶応大学の大学院生で全日本強化指定の藤井岳選手を首都ワシントン地区での柔道の指導に送りこんできた。米側の要請に応じた派遣だが、首都近郊の米海軍士官学校の柔道部を8月26日に訪れた藤井選手は40人ほどの男女と練習を始めた。
 米国の海軍士官学校といえば、学生数4500人、卒業生の大多数は海軍と海兵隊の将校になるが、軍務の後に政界、財界で活躍する例も多く、上院議員や大統領までが輩出してきた。全米から注視される「名門校」だといえる。
 同ソリダリティーでは最初、2010年に五輪金メダリストで現日本男子代表監督の井上康生氏を送り、同校と交流を始めた。その後、「東日本大震災での米軍のトモダチ作戦への謝意も込めて」(山下氏)、大川康隆、片渕一真、塚田真希という学生柔道出身の一流各選手を毎年、指導に派遣してきた。その結果、海軍士官学校の柔道クラブは正式の部となり、部員の技量も大幅に向上した。
 今回の藤井選手の来訪はその継続であり、海軍士官学校への日本人コーチ派遣プログラムがすっかり軌道に乗ったことになる。同選手は同校の練習に2週間、参加したが、冒頭で部員たちの水準を確かめると、反復練習の打ち込み、自由練習の乱取りと、量を増やしていく。
 一段落すると、藤井選手は部員のうちの10人と練習試合をする十人掛けをした。必死に挑んでくる士官学校側を次々にきれいに投げる。観戦する学生たちは目を輝かせて、見つめ、藤井選手の技が決まるたびに歓声を上げる。この練習戦で藤井選手の技に感嘆した柔道部員たちは、その後の練習で同選手主導の稽古にさらに熱をこめた。
 海軍士官学校柔道部では同校教官として最近、赴任したトム・テデッサ中佐が新部長となった。在日経験もある同中佐は練習にも参加し、汗を流しながら「やはり日本の一流現役選手の技を体で受けることは、こちらの部員の技の向上にも役立つのでみんな喜んでいる」と語る。
 日本の海上自衛隊から同校の教官に出向している村越勝人2等海佐も練習を見て、「日本柔道の技だけでなく礼儀や精神までも当校の学生に見せることは日本への親しみを増し、日米同盟の強化にまでつながりうる」と述べた。
藤井選手は首都の「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」の練習にも加わった。同クラブは大学の柔道部と町道場とが合体したような組織で、強い選手も多い。だが同選手はここでも圧倒的な強さを発揮するだけでなく、米側の個々の選手たちと親しく交歓した。その選手たちは弁護士、ビジネスマン、医師など職業人が多い。米国訪問は初めての藤井選手にとっては期せずして、社会の多様な層との接触となるわけだ。
 藤井選手は今回の訪米について「自分の日本柔道を米側がこれほど高く評価してくれるとは思わず、自分にとっての米国がとても身近になった」と語っていた。
 どうやら柔道は日米間の人間レベルの交流の相互深化を確実に進めるといえそうである。

(ワシントン駐在客員特派員・古森義久)